「好きだよ。とても好きだよ。アンタとは一緒に居たいし、手も繋ぎたいし、ぎゅーって抱きしめて欲しいし、キスとかもしてみたい。だけどね、やっぱり無理なんだ。アンタの事は大好きだけど、でも私はそこから先に進めないよ。私は今の生活が大切だし、友達だって家族だって大好き。そんな大切な物を全て捨ててまで貴方と一緒にはいけない。私と別れたくないのなら、アンタがここに留まってよ。私にばかりそんな要求を押し付けないで。」

携帯電話を床に投げ落とした。
床に思いっきり打つかって幾つかの部品が壊れたのだろう。
ドスっとかいう落下音と同時にバキンだとかよく分からない、とりあえず何かが壊れる音がした。
もしかしたらアンテナが折れてしまったのかもしれない。
アンテナが付いてる物凄く古いやつじゃなくて、テレビの見れる最新種。
買い換えたばかりだったのにもう壊れてしまった。
慰謝料請求してやりたいよ、本当に。
拾い上げるのも面倒で、とりあえず床に放置してみた。
電池パックが外れて私の足元で転がっている。
嫌だな、メモリ飛んでたらどうしよ。
データが全部消えてたらどうしよ。
でも不思議なことにそれ以外に不安になることなんて何もない。
私にとって彼は所詮その程度の存在だったのだ。
あぁ、なんて薄情な女なのだろう。
用事が済んだら



彼からの電話はかかってこない。