明日も同じ時間にこの場所に来るんですか?

タグを打つのが面倒だから、もうこっちにあげる。このブログ懐かし過ぎる。




 照り付ける日差しはジリジリと肌を焼き集中力を奪っていく、額から流れる汗を拭ってもキリがなく、残った練習時間を確認すれば逆に絶望するばかりだ。練習は嫌いではない。が、この暑さと日差しには流石に気が滅入る。


「たるんどるぞ赤也、しっかりせんか」
「す、すみません真田副、ぶ…って仁王先輩じゃないっすか。脅かさないで下さいよ」
「騙される方が悪いぜよ」
「まぁそうなんですけど、」


 背後から突然響いた声に思わず肩を震わせるも、振り返り姿を確認すれば思わず脱力してしまう。ただ本来なら自分とは違うメニューをこなしているはずのこの人が今この場所に居るのがそもそも不思議で、問い掛けの言葉を口にしようとするも、それよりも先に「十五分休憩じゃ、知らせに来た」と言われ、そのまま口を閉ざした。疑問を奪ったつもりなのだろうが、逆に疑惑を深めたという事にこの人は気付かないのだろうか。休憩時間になれば気付けば一人日陰で涼んでいるこの人に限ってわざわざ後輩に知らせに来るなんてことをする訳がない。(そういうのはジャッカルさんの仕事だ)


「仁王先輩、何か用があるなら言って下さ…」
「あ、仁王じゃん。練習お疲れ、暑い中大変だね」
「そっちこそ委員会じゃろ?わざわざご苦労さん」
「まぁ会議室はクーラー効いてて快適なんだけどね」


 再度俺の声を遮ったのは見慣れない女の人だった。制服からこの学校の生徒だという事は分かるし、仁王先輩との会話から彼女が三年の先輩だという事は何となく予想が付く。コンビニでよく売っている水色のアイスを片手に立ち止まる彼女と談笑を始める仁王先輩というのはどうにも新鮮で、水分補給だとか諸々の休憩時間に済ませておきたい事を忘れて、思わず二人を眺めてしまった。仲が良い、けれどそれだけではない気がする。


「どうしたの?アイス食べたいの?」
「いや、そういう訳じゃないっす」
「遠慮しなくても良いよ、一口あげる」
「赤也にやるんなら俺にもちょーだい」
「別に良いけど、一口だけだからね」
「分かっとる」


 そう言って伸びた仁王先輩の手はアイスを持っていた彼女の手を捕まえる。驚いて目を瞬かせる彼女の反応と後輩である俺の視線などお構いなしにその手を引っ張って自分の口元までアイスを運んで行く。気まぐれか、それとも意味があってのものか。もし意味があるのなら、その意味に気付けない程鈍感ではない自分が恨めしい。アイスを口にして漸く離されたその手に思わず視線を向けてしまう。相変わらず女の人の様に白いその手が少しだけ朱に染まっちたのは自分の勘違いだと信じたい。


「ご馳走さん」
「はいはい。あ…えっと、赤也君?赤也君も一口要る?」
「残念、休憩時間は終了じゃ。行くぞ赤也」
「あ、はい」
「休憩中に引きとめてごめんね。二人とも練習頑張って。熱中症とか気を付けないと駄目だよ!」


 そう言っててを振ってくれた彼女に会釈して、自分よりも少し先に歩き出した仁王先輩の後を追う。まさかこの人から向けられる事になるとは思わなかったあからさま過ぎる嫉妬の視線に閉口せざるを得ない。赤也と名前を呼ばれたのはこの人自身が俺の名前をそう呼んだからに過ぎないし、そこに深い意味がない事などある訳がない。そんな事は仁王先輩の方が知っているだろうに。





明日も同じ時間にこの場所に来るんですか?


(思わず問い掛けてしまって後悔したのは言うまでも無い)(あぁ、でもこの人も意外と)(普通の男子中学生だった)