それさえも貴き日々で

頭がクラクラする。
よく分からない頭痛に顔をしかめがらもえすこは目を開けた。
何故だろう、自分達はさっきまで学校のMCにいつものようにたまっていたはずだ。
あと三日もすれば中間考査が始まる。
そんな中でも勉強会と称した溜まり場。


楽しかった。
皆でわいわいやって。
閉館直前まで勉強しつつ遊びつつ。
いつもの光景だった。


―しかし、そこから先の記憶が曖昧だ


まるで白く霞みがかった映像だ。
えすこはそんなことを思いながら思い出す。
辛うじて覚えているのが目の前でいきなり倒れていく廃人達。
気付いたらMCには誰も居なくて、自分達だけが取り残されていて。
一番最初にそれに気付いたのは帰ろうとしていたのは華南だった。
「おかしくない?」と、そう言って手に持っていた鞄を落とした。
たまたま近くに居た廃ぽに倒れ掛かり、そしてそのまま…。
自分を含め皆が、次々に意識を失っていった。


思考を現実世界へと戻す。
目を覚ましたえすこは今自分がどこにいるのか分からなかった。
―左右に隙間をおいて置かれた机
―後ろにある二段のロッカー
―教室独特の少し段差のある教壇
―その中央には教卓


「どっかの教室…?」


小さく呟いた。
見回せば周りには皆がいて、それが自分を安心させる。
しかしだからといって不安材料が無いわけではなかった。
自分の隣にはOVAがいた。
後ろにはクライムレス。
三かける三で机が並んでいて、皆がそれぞれにつっぷつしている。
寝起きが一番悪いのは自分のはずだ。
(そのことは自分が一番よく分かっているし、凪良や、特に卒業旅行で自分の布団を引っぺがした華南は充分承知の事実)
なのに自分が一番早く起きている。
何かがおかしい。
しかしそう思うよりも早く、教室の扉が勢いよく開いた。