ユガミズム

書き直してみた。色々あって時間がかなりあまってるんです。
暇です。ひーまー。




「置いていかないでね。」
「えぇ。」
「独りにしないでね。」
「分かってます。」



私の頭を撫でる手。私を呼ぶその声。私を包み込む腕。でも全ては幻だ。彼は甘い言葉をくれるけれど私は何時だって独りだった。(ちなみに言うと独りと一人は違うんだ)血に塗れて、傷を作って、銃を片手に。目の前の彼は笑って私から手を離す。クフフ、という彼独特の笑いがやけに耳に残って仕方がない。どうせなら全て消え去ってしまえばいいのに。そんなどうしようもないことを考える自分がいる。


「嘘つき。」
「えぇ。」
「裏切り者。」
「分かってます。」


置いていかないでと言ったのに置いていく。独りにしないでと言ったのに独りにする。姿も幻なら言葉も幻。どこからが本物で、どこからが偽物かが分からない。(あぁ、もしかすると全てが幻かもしれないわ。)(だって、彼の存在は浮きすぎているもの。)だから彼は霧の守護者なんてものになってしまったのだろう。正体が掴めない彼は他の何よりも霧の守護者というポジションが似合っている。そして巻き込まれる。マフィアの抗争、マフィアの戦い、マフィアの憎しみに。あれほどマフィアを嫌っていたのは彼なのに。小夜にとって骸がどんな理由であろうともボンゴレの仲間に入ったことは許せないことだったのだ。


「私のこと愛してる?」
「えぇ。」
「私も骸のこと愛してる。」
「分かってますよ。」



終りのない押し問答。小夜は小さく溜め息をついた、長い黒髪が風にゆれる。嘘つきね、再度そう言ったが今度は肯定の言葉も否定の言葉も無かった。小夜にとって骸がボンゴレに入ったことは裏切り行為であった。どんな理由があったとしても、それは簡単に許せることではなかったのだ。そして彼は自分に別れを告げる。愛してるなんて言っても彼がボンゴレに入った時点で別れは決まっている。小夜は再び溜息をついた。こんな押し問答は不毛だと思った。



「ねぇ、」
「はい、何でしょう?」
「何でもない。」
「分かってますよ。」


だけど終わらせることが出来ない。また繰り返しだと心の中で溜め息をついた。終りが来ない。早く終ればいいのに。でもその反面終わらないで欲しいと願う。骸は言った、死なないで下さいと。小夜は答える、それは私の台詞だと。


「キミは僕の物です。」
「えぇ。」
「僕以外のヤツに殺されないで下さい。」
「分かってる。」
「他の誰かに殺されるくらいなら僕がキミを殺します。」
「なら殺される前に自分で死ぬわ。」



ふざけてそう言うと骸は笑う。いつも通りに声を上げて、だけどそれでいて苦笑交じりに。骸の真意だとかそんなものが小夜に分かる訳がない。だけど骸があまりにも悲しそうに笑うので(あれ?これって気のせい?)小夜はつられるようにして自分も笑った。



「でも本当は殺したくないんです。僕の手で守りたいんです。」
「分かってる。」
「だから生きて下さい。僕に殺されない為にも。」


矛盾だ。その言葉は激しく矛盾している。彼が存在すらも矛盾した生き物に見えた。好きだから殺すのか、なら殺せばいい。愛してるから生かすのか、なら生かせばいい。答えは考えるまでもなく簡単だった。どの道私に選択肢なんてないのだから。骸の嘘に気付けない程私は馬鹿じゃない。骸の嘘に気付かない程私は優しくない。好きだから気づいてしまうのだ。


「ばいばい、もう一度会える日を願ってるわ。」
「えぇ。」
「でも、もう二度と会う事がないと嬉しいわ。」
「分かってます。」



繰り返された押し問答。答えは変わらず。それは歪んだ貴方の愛故にかしら?



ユガミズム
(歪んでるのはアンタだけじゃない)