BmA三話


ベッドに体を横たえまどろむ。メイド達に城中を案内され体は疲労しきっていた。体力がない訳ではない。むしろある方だと自負していたのに、もうこれ以上体を動かしたくないと思える程精神的にも参っていた。これは私の夢、何時かは覚める夢。なのに終わりは一向に訪れず、リアリティは増すばかりだ。このまま寝てしまえば折角貰った服が皺だらけになってしまう。せめて脱がないと、そう思っているのに体は言うことを聞かない。エプロンのポケットから瓶を取り出しぎゅっと握りしめる。空っぽだったはずの瓶に僅かに液体がたまっていた。誰かと交流を重ねれば増え続ける液体、それが溜まれば帰れる、溜まらなければ帰れない。

「小夜子…」

小さく零した友人の名前。彼女は一体今どこで何をしているのだろうか。それとも彼女が男に連れ去られた事さえも夢なのだろうか。何も分からない、何も考えたくない。考えたくないあまりに今日一日を振り返る。変わらぬ学校生活、小夜子の私を呼ぶ声、落ちた穴、大きな時計塔。案内された後に食べた夕食はやけに豪華で美味しかった。獄寺君がホワイトボードを使ってしてくれた説明は軽く聞き流し、美味しそうに食べる綱吉君の揺れる白い兎耳ばかり見てた気がする。ヒバリはずっと黙々と食べていたし、群れるのが嫌いなヒバリが一緒に食事を取ることはとても珍しいことだと山本君が教えてくれた。この国の地図だとか領土関係、他の統治者達、顔無しと役持ちの関係、それを説明する獄寺君の視線はいつだって綱吉君の方を向いていた。女王陛下だとか王様という役を持った人がこの世界にはまだいるらしく、またそれ以外の大多数の人は顔無しというものに分類されるらしい。メイドさんや兵士も顔無しに当たるようで、思い返せば確かにその人達は顔がぼんやりとしていて、目を凝らさないと誰が誰だか分からなかった。それでも顔が分かると言ったら流石余所者だと誉
められているのか貶されているのか微妙な言葉を言われた。ただ余所者は他の世界から来た人間の総称のようなものらしい。

「余所者は…帰るべきだよね…」

ぼんやりとそう思う。しかし同時によく分からないこの不思議な世界が楽しいと感じてしまっている自分がいる事に気付く。何時か覚める夢、割り切って覚めるまでの時間を楽しむのもいいかもしれない。ゆっくりと沈んでいく思考の中、瞼が下りていくのを感じれば、静かに眠りについた。





温かな日差しの中、チャイムの音が響きわたる。授業の終わりと放課後の始まりを告げるチャイムは同時に部活動の始まりを告げていた。しかし部活を引退した今、そんなことは関係ない。机の中に入っていた教科書を鞄に詰め込む。そんな中、教室から出ようとする男子の姿を見付けて慌てて立ち上がる。

「ねぇ、話があるの」

そう言って駆け寄った。不思議そうな顔一つ浮かべないのはこうしたやり取りがいつもの事だからだろう。どうかした?なんて疑問の言葉が返ってくるのは部活が終わって私と彼との間にあったはずの確かな繋がりが薄れてしまったから。声をかけることはいつもの事でも、その理由が部活以外で彼には見付からないらしい。

「ほら、引退したから後輩に引き継ぎしなくちゃいけないじゃない」

そう言うと彼は酷く納得した表情を浮かべる。部活以外の事を出せば驚いたに違いない。しかし引退したとはいえそれはつい先日のこと。それにも関わらず部活関係の用事だと分からないその思考が色々と疑わしい。折角三年になって後輩から頼られる存在になったというのに、そんな姿は最早微塵も感じられない。抱きつつあった責任感は一体どこに言ってしまったのだろう。

「あのね…曲がりなりもアンタ男子キャプテンでしょ」

彼は私の言葉を笑って誤魔化す。笑って誤魔化そうとする彼も馬鹿だが、それで誤魔化される私も相当馬鹿だ。しかも彼だから誤魔化されるんだ、なんて自分に言い訳をしている私は何とも救いようがない。誰かに罵って欲しいくらいに私の今の状態は心身ともに馬鹿らしかった。

「やっとキャプテンっぽくなったって思ったのに」

彼は言い訳の言葉を口にする。そしてそれに私はまた誤魔化される。馬鹿だ、本当に馬鹿。それでもそれが仕方のないようなものに思えてしまう。本当は頼りない彼がいざって時にはとても頼もしく見えた。きっと私は騙されてしまうだろう。何度だって騙されて何度だって誤魔化される。

「じゃあ土曜日の二時、部室でね」

彼の同意を聞いてから「じゃあね」と片手を軽く振った。土曜日の二時はいつも部活が始まる時間。今まではいつものように顔を合わせていたというのに、見掛ける事さえもなくなった土曜日の午後二時は私にとってほんの少し大切な時間だということを恐らく彼は知らないだろう。

「ばーか」

小さく零したその言葉は彼ではなく自分自身に向けたもの。恋をすると人は色々な意味で馬鹿になるらしい。短いたった数分の会話でさえも輝かしいもののように思えてしまう自分は本当に馬鹿だ。「ばーか」と再び零す今度は自分ではなく彼に対して。私の気持ちに恐らく全く気付いていない彼に気持ちを伝えたらどうなるのかが気になった。だからこそ私は小さな決心を一つ心に残し―




帰らなくちゃ、早く帰らなくちゃ。土曜日までに帰らないと彼に会えなくなってしまう。彼との約束をすっぽかしてしまうなんて、そんなの絶対に嫌だ。暗い闇の中それだけを思う。穴に落ちた時のように自分の存在だけがぼんやりと光る姿は不思議だけどそんな事を気にしている暇はなかった。私は早く帰らないといけない。

「本当に帰りたいんですか?」

ふと声をかけられ体が宙にふわりと浮いたような感覚に陥る。不明瞭だった自分の存在が急に明確になり、目を数度瞬かせた。目の前にはこれまた変なスーツを着た男の人。赤と青のオッドアイがとても印象的で、瞳に描かれた六という数字を不思議に思いながらも、どうせこれも夢なのだと割り切った。

「帰りたいわよ。それに私は帰らないといけないの。」
「どうして?」
「どうしてって…だってまだ伝えてないから」
「好きと伝えることはそんなにも大切なことなんでしょうか」

大切に決まっている。そう思った瞬間彼が微笑むから、言葉を飲み込む。私の隣で宙にふわりと浮く彼はとても綺麗な顔をして笑っていた。…どうも私は周りの女子と同じように美形の男子というものが好きらしい。特に中性的な顔立ちが好みだというのだから救いようがない。

「…誰よ貴方」
「ナイトメアとでも名乗っておきましょうか?」
「何それ、それも何かの役の一つな訳?」
「いいえ、そのままの意味です。僕は貴方にとっての悪夢、そして彼女にとっての悪夢」

私にとっての悪夢というのは理解出来る。ここは私の夢、穏やかな日常を思い描く夢だったのにそれを邪魔する彼は確かに悪夢だった。しかし夢の中で見る夢は一体なんと呼ぶのだろう。そんな私の疑問に気づいたかのように、クフフと個性的な笑い声をもらした。

「この世界では皆が貴方のことを好きになりますよ」
「そんなの有り得ない」
「自分が好かれるはずがないと思ってらっしゃるんですね」
「…誰だってそう思うわよ、普通」
「おや、しかしそれにしては明確な理由があるような口振りですが」

明確な理由なんてある訳がない。だけど皆が私を好きでいてくれるなど都合が良すぎる。しかし、もしそれが本当だとしたら私はどれだけ愛情に飢えているのだろうか。夢は深層心理を表すというのは有名な話だ。私は皆に愛されたいとでも思ってるからこんな夢を見ているのだろうか。それこそ馬鹿馬鹿しい。しかも皆が私を好きなのにヒバリやら獄寺君には何かと睨まれた気がする。

雲雀恭弥はどう見ても貴方に好意を抱いているでしょう。彼は素直じゃないだけです」
「…なんでそんなこと分かるの」
「彼は分かりやすいですから。無理矢理薬を飲ませたのも一緒の好意の裏返しのようなものでしょうか」
「なっ…!」
「逆に山本武の方が分かり難いですね。ちなみに獄寺隼人は戸惑っています…僕が不思議ですか?」
「…そりゃね」

まるで私の考えを呼んだかのように疑問への回答をくれる。回答にしては些か不親切な気もするが悪夢なのだから不親切なのは仕方ないだろう。私の夢だ。変なところでひねくれているのは最早私の性格に違いない。案外さらりと役名とか言ってくれそうな気がする、なんて思うと同時に彼はまた独特の笑い声をあげた。

「役は言えませんが名前は六道骸です。ご察しの通りナイトメアは俗称のようなものですよ」
「…もしかして本当に私の考えが読めるの?」
「えぇ。正確には心の声が聞こえるだけですが。」

なら教えて欲しい。この世界は一体何なのか、私の妄想が生み出した産物か、それとも本当に存在しているのか。皆に好かれるなどという都合の良すぎる展開の理由は一体なんなのか。そう考えてじっと骸の顔を見る。こうして考えるだけで通じてしまうのはある意味とても便利なことかもしれない。…その髪型変だなとか一番最初に思ったのは通じてなければ嬉しいが。

「貴方は代えが利かない存在、だから皆に好かれる。何も余所者が珍しいという理由だけじゃありません」
「何言ってるの。代えが利かないのは貴方達だって一緒でしょ?」
「いいえ、僕達の代えは利きますよ。役持ちだろうと顔無しだろうと同じです。ただ役持ちは代えを作るのがほんの少し面倒ではありますが」

よく分からない。それが正直な感想だ。何故私なら代えが利かなくて彼らは代えが利くのだろう。私に都合が良く出来てる世界だから私が色々と尊重されているということなのだろうか。ねぇ、なんで代えが利かないの?首を傾げながら頭の中で問いかけてみる。伝わっているはずのに答えは返ってこず、ただ彼は愉快そうに口を開く。

「夢じゃありませんよ。全て本物です。もっともここは夢の中ですが」
「夢よ。全部夢だわ。いつかは覚める夢なのよ」
「貴方がそう思いたいならそれでもかまいませんが…ただこの世界を好きになって下さいね」
「帰らなくちゃいけないのに愛着が湧いたら困るんだけど」
「そう言われてしまうと貴方を連れて来た渋沢君が何やら可哀想になりますね」

渋沢君って一体誰?私は連れて来られたんじゃなくて友達を追って自分でやって来たの!何故かそれを必死で主張している私がいる。「そうでしたね」なんて軽く返されムッとしながら、変な頭のくせに!とムキになる。一瞬顔が強張った気がするが、それはすぐに消え、頬を撫でられる。男のくせに妙に細い指はとても冷たかった。

「本当に帰りたいんですか?」

耳元に唇を寄せ、内緒話のように囁かれる。当たり前だと思うよりも先に、辺りが急に明るくなる。目を瞬かせれば真っ白な天井が広がっていた。夢、今のは全て夢。なら今は?そう問いかけたところで返事が返ってくる訳がない。肝心なところで答えをくれない彼は本当に私の夢の中の産物かもしれない。クフフ、なんて独特な声が聞こえた気がして私は静かに体をベッドから起こした。

リボーンソート

この前やった笛の復活版。
http://muu.in/reborn20/reborn1.html


私が幻騎士が好きだということがよーく分かった。
そしてスパナも白蘭も好きだ。
でも私ボンゴレI世好きなんだけどな。なんか順位下だ。

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お下がり人形遊び

某後輩の小説見てて何となく書きたくなった。
しかし久しぶりに書いた短編が凌辱ものとはどういうこった(´・ω・`)
↑いや、後輩の小説が凌辱ものだったからなんですけどね!

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やってみた。

なんか質問に答えて順位つけるやつ。
私が基本的にKPが好きなことがよく分かります。
でも天城君を愛してます。
李が上位に入ってるのが謎。いや好きだけどさ…!
でも将ちゃんより平馬とか設楽のが好きだし、山口君も好きなんだぜ。
途中適当に答えまくったからか、このやろー

http://whistle.tobiiro.jp/whistle.html

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