お下がり人形遊び

某後輩の小説見てて何となく書きたくなった。
しかし久しぶりに書いた短編が凌辱ものとはどういうこった(´・ω・`)
↑いや、後輩の小説が凌辱ものだったからなんですけどね!



ぎしりとベッドの軋む音に少女は目を覚ます。その音は当然、自分の敬愛して止まないXANXUSのものだと物で、ぼやける視界の中、ゆっくりと手を伸ばす。触れたのは冷たい手。いつも通り冷たい手だったけれど何かが違うことに少女は気付く。その手は少年のものだった。自分から滅多に触れることはないけれど、XANXUSの手とは確かに違うその手に少女は戸惑う。XANXUSの手は骨ばっていてとても大きなものに感じられたのに、触れたその手は細く成長過程の少年を彷彿させた。


「やっと起きた?お前ずっと寝ててつまんねーから、そろそろ殺そうって思ってたんだよね。」


その声に少女は絶望する。触れた手を引っ込めそこにある現実を疑うかのように目を擦れば、そこにいたのは金髪の悪魔の名前を持った少年だった。慌てて体を起こし、部屋を見渡せば絶望は更に深まる。XANXUSの姿が見えないだけではなく、その部屋はXANXUSの部屋ですら無かった。ベルフェゴール、と掠れた声で少女は少年の名前を呼ぶ。その声に言葉を返す代わりに唇の端を上げて応えた。


「ねぇ、ボスは?ボスはどこに居るの?」
「ボスは自分の部屋と女とイチャイチャやってる。お前さ、もう分かってんだろ?」
「…分からない」
「すっげー傷ついた顔してんのに気付かないふりしてる訳?」
「分からないって言ってるじゃない…!」


XANXUSと愛しいボスの名前を大声で叫びたくなる。それが出来ないのはXANXUSが二人っきりの場以外で名前を呼ぶことを酷く嫌がっていたのを覚えていたからだ。周りに誰かいる時、それがスクアーロなら特にXANXUSは嫌そうな顔をした。そして最後にはどこか照れくさそうな顔をした。少女にはその様子が愛おしくてたまらなかった。それを言ったらスクアーロには頭がおかしいんじゃないかと馬鹿にされたが、それでも少女はXANXUSがたまらなく愛おしく、そして同時にXANXUSが自分のことを愛おしく思ってくれていると信じて止まなかった。考えていることは無表情の為に分かりにくいXANXUSでも、その行動が持つ意味自体は読み易い。少女は分かっていたのだ。この現状が指示す意味を。


「分からないのなら慈悲深い王子が直々に教えてあげる。」
「良い、教えてくれなくて良い」
「お前はさ、」
「お願い言わないで…」
「ボスに捨てられたんだよ」


耳を塞いでも聞こえてくるベルフェゴールの声。それはまるで死刑宣告のようだった。むしろ死ねと言われた方が少女からすればマシだったかもしれない。瞳から涙を流すことはなかったが、しかし泣きたいくらいに悲しく、叫びたいくらいに惨めで、そして何よりも現実に絶望していた。そんな少女の顔を見てベルフェゴールは笑い声をあげた。彼がXANXUSからお下がりの女を貰うことは初めてではなかったが、ただどれもベルフェゴールを興味を惹く程の女ではなかった。回ってくる女達はXANXUSとの関係が体だけのものだと割り切っていたのだから、そこには絶望の色も何もない。しかし目の前の少女は違う。今にも泣きそうな程傷ついた顔をして鳴き声一つもらさない少女は、XANXUSを心から愛していた。そんな絶望した表情が何よりもベルフェゴールを欲情させるのだと少女は知りもしないのだろうが。


「お前は今日から俺の玩具な」
「嘘よ…」
「嘘じゃねーって。ちゃんとボスから貰ったから、正真正銘お前は俺のモン」
「ボスがそんな事するはず…」
「無いって言い切れんの?それよりもさ、ボスの跡はっきり残ってんのって何かムカつく。」


ベルフェゴールは少女が身に纏うシーツを剥ぎ取り、首筋に残る欝血した個所に唇を寄せる。嫌がる少女の抵抗はベルフェゴールを煽るばかりで、片方の手で器用に少女の両手を固定した。残された跡の上から強く吸い上げまた新しい跡を残せば、そこでふとベルフェゴールは考える。XANXUSもまた彼女を心から愛していたのだ。ベルフェゴールは愛が何たるかとよく理解していなかったが、しかしXANXUSの行動が不自然なものであるくらいは理解出来た。飽きたものを他人に譲るのならまだしも、お気にいりの玩具を他人に譲るなど有り得ないことである。それはベルフェゴール自身の話ではあったが、彼の知るXANXUSもまたそう簡単に何かを手放すような存在だとは思えなかったのだ。


「ねぇ、お願い…止めて、ベルフェゴール」
「そういう声が男を煽るって知ってた?大人しく俺に抱かれろよ」
「XANXUS以外の男に抱かれるなんて嫌…!」
「そういう女が一番ボスに嫌われるんだぜ。それにボスがくれたもんを俺がどうしようが勝手だろ」


冷たい手が体を這う。それはXANXUSの手ではない。XANXUSの手ならその手の冷たさに心地良さを覚えたのだろうが、今感じるのは不快感だけだった。少女はそこで初めて涙を流した。ただうわ言のようにXANXUSと愛しい彼の名前を繰り返す。部屋の扉が勢いよく開かれ自分に駆け寄るXANXUSの姿を脳裏に描くが、それはすぐに温かな唇によってかき消される。カサカサと乾いたXANXUSの唇は肌と同じくらいに冷たいというのにベルフェゴール唇はとても温かかった。無理矢理口をこじ開けられ、舌を絡められる。抵抗しようとするのに、両手が頭上で固定されてる所為で身動きすら取ることが出来ない。獣のように荒々しいXANXUSの口付けとは違うベルフェゴールの口付け、その間にも片方の手は体を這う。比べてはその差に絶望し、しかし呼ばれることのない自身の名前に少女は安堵する。XANXUSが名前を教えなかったというその事実だけが残された細い糸のように思えて、それだけが少女の救いだった。




お下がり人形遊び