それさえも…

名簿番号一番のえすこが席から立ち上がった。
そんな彼女の背中をじっと見つめている自分がいる。
理解できなかった。
殺し合いってなんなのか。
なんで自分達がこんなものに巻き込まれているのか。


「二分間のインターバルをおいて次の人…えっとOVAね。出てください。」


那智瑠ちゃんの言葉がすごく冷たいもののように聞こえた。
背筋がぞくぞくする。
どうしてだろう。
自分は何でこんなにも怯えてるんだろう。
皆が誰かを殺したりするなんて思ってない。
だけど、それでも

―怖かった


「よし、じゃあOVAいってらっしゃーい。で、次が華南ね。」


二分間なんてすぐに過ぎていく。
気づいたら廊下の外にいた瑠璃にナップサックみたいなものを貰ってて。
持ったそれは意外と軽かった。
一瞬その意外なまでの軽さにほっとした。
でも、すぐに不安になる。
自分はこのまま殺されてしまうんじゃないだろうかって?


皆を信じていない訳じゃない。
ぐるぐると頭が回る。
何をするべきか、何をしたいのか。
それさえも考えつかなかった。


―だから


とりあえず走った。
草を踏んで、泥が跳ねて、こけそうになりながらも走った。
どこへ行けばいいのかなんて知らない。
っていうか知ってる人なんて居ないだろう。
とりあえず意味のない行動だ。


「なんで…なんで…なんで…なんで…!!!!!!」


えすこに会いたくなかった。
華南に会いたくなかった。
(だって絶対に怖い)
誰にも会いたくなかった。
何も考えずにただ走った。