それさえも…

キャラ変更wうふふふ…自分の小説の中だけは、まともにいきたい。
いや、こういうキャラじゃ決してないんだけどね。
でもさぁ…うん。
大丈夫、後でやっぱり私は私になるからww




コルトガバメントM45口径
それが自分の武器だった。
アメリカ、コルト社のオートマチック拳銃
―使用弾は45ACP、マガジンには7発装填できる。
なんて付属の説明書に書いてあったが正直使いこなす自信はない。


名簿番号六番、少年
現在は海に向かって北上中。
地図を見ると北の一番端は崖になっていて、海が見えるらしい。
使いたい訳ではないが念の為に手には武器を構えて。
そこまで重くないはずの銃のはずなのに自分の手にはずっしりと重い。


(っていうか…ささめの所では初っ端から女帝さんに殺され、お兄さんの所では女帝さんに捕まり…)


そして凪良さんのところでは眉毛を殺そうとしている。
でもそこで自分の見たBR小説は終わっている。
唯一自分が誰も殺していないことが救いだったのかもしれない。
しかしあれは身内による身内の為の小説だ。
実際とは違う。


そんなことを考えながら歩き続けた。
誰に会おうと構わない。
自分はその人物を信じてみせる。


「・・・・・・・・・・・・・・って!?」


前言撤回。
ちょっと若干不安になってきた。


「やぁ、少年。ご機嫌はどうだい?」
「…何キャラ?」
「キミと私はこういう場において酷く縁があるようだ。」
「えっ無視!?」


数分ぶりに見た女帝さんは、よく分からないキャラに変わっていた。
何をすることもなく、武器も持つこともなく
(ということは外れか?少し安心した)
ただ、そこに立っていた。
誰かを待っているかのように。


「この世は全て運命で決められているんだよ。この出会いもまた偶然であり必然さ。」
「いやいや、なんか色々とおかしいって!!」
「おかしくないって。私はどの身内小説でも最強なポジションやから、今回はキャラを変えてみようかと。」
「変われんの…?」
「努力する。」


ということはゲームに乗るつもりはないらしい。
女帝さんが皆の小説のようだったらどうしようかと思った。
(皆文才があるから…怖いのなんのって)
(凪良さんも怖かったし、お兄さんも怖かったけど)
(ある種ささめも…?)


「まぁ良かったよ、会ったのが少年で。ぽさんとかだったらどうしようかと思った。」
「えっなんで?」
「だってあの人チキンじゃん。チキンには興味ないね。」
「チキンやったら安全ちゃう?下手にやる気のあるやつなんかより…」
「安全なのが嫌なの。私は、人を殺すから。」


その言葉にぎくり、とする。
何を言ってるんだろう。
小説のままなのか?
自分は殺されてしまうのか?


「キャラ変えるんちゃうの…?」
「変えるよ。」
「人とか殺したらキャラなんか変わらんやん。」
「だって私が殺すのは自分自身だから。」


…えっ?
何を言った?
この人今何を言った?


「正直自殺はしたくないねんな。それなら殺されたいし…あっ自分から進んで殺されるのも自殺に入んのかな?」
「ちょっと待って!!なんでそうなんの!?」
「なんでって…だって面倒やん。殺し合いとかさ、勝手にやってくれって感じ。」


同感だ。
だけど、でも、


「BRってさトトカルチョがあるのが定番やん。私って割りと賭けられてそうな気がすんねんな。」


いつもと同じ顔して、
いつもと同じような声音で、
いつもと同じような態度で、


「だから、ここは政府の連中達をこう…ぎゃふん?と言わせる為に早々と死んでやろうって思うの。」


だからってなんでそんなこと言うの。
なんで死のうとか思うの。
そんな感情が表情に出ていたらしい。
女帝さんはいつもと同じような笑みを浮かべながら言った。


「昔さぁ…サイ部で言わへんかった?夢の中でBRやってて、私は少年に出会うって。」
「…覚えてない。」
デジャビュとかすっごい感じんねん。だからここで少年に会ったのは運命やと思う。」


答えになっていない。
そう言った俺に彼女は呟く。
小さな言葉だったが、周りが静かなこともありはっきりと聞き取れた。
―殺して?
その言葉に身じろぐ。
だけど、後ろに下がりたくはなかった。
一歩女帝さんに近づいた。


「俺は殺さへん。女帝さんだけじゃなくって誰も殺さへん!!」
「意外。少年は乗るかと思ってた。凪良の小説の中では素晴らしかったのに。」
「あんなん現実とちゃうやん。」
「まぁそうだけどさ。でも…殺してくれないなら、私少年を殺すよ?ささめの小説を思い出しながらさ。」
「武器あんのかいな…。」
「当たりだよ。当・た・り。ベレッタM92FS、イングラムM10サブマシンガンじゃないのが残念だけどね。」


それでも十分怖い。
この人は自分の出来ないことは言わないが、自分の出来ることは口にする。
笑顔で皆が「氏ねw」だとか「殺すぞw」とか言ってる中、一人だけ「目障り、どっか行け」「殴るぞw」とか言う人だ。
有言実行、言ったことを突き通す。


「さぁ…どうするの少年。私を殺す?それとも私に殺される?」
「どっちも嫌や…。」
「生きたくないの?」
「そりゃ生きたいけどさ…でも誰かを殺してまで…」


彼女は笑った。
声をあげて。
まるで可笑しなものを見たかのように。


「私は死にたいよ?」


意外な一言だった。