それさえも…

でも、元々はこれ私じゃなくってえすこだったんだよな…
何でかすり替わりww


嘘つき、嘘つき、嘘つき
裏切らないって言ったじゃないか。
裏切り者!!!


仕方がないことだとは分かっていた。
だけど自分のどす黒い感情を止められない。
裏切られるのが嫌。
皆が離れていくのが嫌。
だから私は選んだ。
なんて簡単なことなんだろう


私が裏切ればいい。
私から離れればいい。
私が皆を殺す前に、
私が自分を殺せばいい。


「死にたいってどういうことなん…?」
「そのままの意味だよ。それとも何?読解能力捨てちゃった?」
「いや、それは分かってるけど。」
「今少年に殺されなくても私はどうせ死ぬ。これから先、もしかすると少年は誰かを殺すかもしれない。なら断然今私を殺してしまうのがお得だと思うんよ。」


はい、キミは運が良いのです。
無傷でベレッタM92FSが手に入るのですから。
ベレッタM92Fの改良版。
初心者でも使いやすく、命中率も割りと高いとか。


「だからって…」
「別にさぁ、私は少年を殺して他の人を待ってもいいねん。」
「…。」
「ほら、殺せばいいじゃん。震えてるよ。」


少年は優しい。
残酷な程に優しい。
だからこそ私を殺してくれるのだろう。
それなりに度胸もあるだろうから逃げるなんて真似は絶対にしない。
あぁ安心だ。
きっと痛くないように殺してくれる。


銃口を私のこめかみに突きつけて引き金を引くだけでいい。それだけで終わる。」
「…嫌や。絶対に嫌や。」
「なんで?」
「俺は生きて欲しい。誰にも死んでほしくない。」
「綺麗事だよそんなの。誰も死なないなんて無理に決まってるやん。」
「無理じゃない。ほら、ラッキーワードとかあるやん。」


バッドワードという存在を忘れてませんか?
それにどんな言葉かも分からない。
もしかすると日本語かもしれないし、私達の知らない言葉かもしれない。
綺麗事を通り越してたわ言、否戯言だ。


「絶対に無理。無理無理、夢物語だって。」
「やってみな分からんやん。」
「そんな夢私が壊す。私が少年を殺す。」


馬鹿だ。
裏切られるのが怖くないのか。
自分は皆で生き残ろうとか思っても。
絶対に誰か一人くらいはゲームに乗る。
それがどんどん渦を巻いて…そこからどんどん広がっていくに違いない。


「じゃあ生き残れ。俺殺して生き残れ。」
「…ばっかじゃない?私を殺す為に少年を殺すのに。」
「俺殺して自殺とか絶対に許さへん。あの世で祟ったる。」


少年の言葉に思わず目を見開いた。
お人好しか。
だけど笑えない。
笑えない程、少年の目は真っ直ぐで。
思わず口を閉ざしてしまった。


「…怖いね、それは。」
「ただ生きて欲しいだけやねん。自分の命無駄にするとか有り得へんし。」
「そういえば少年はリスカとか許せない人間だったね。」


思い出す。
あぁそうか、そうだった。
少年はこういう人間だったと。


「最後に聞くけど、こんな私でも生きて欲しいとか思う?」
「当たり前やって」
「そう…。」


残念だけど私。
有言実行派なの。
そんな言葉なんかに惑わされたりしない。


でも、たったの一言に揺さぶられるなんて。
私もまだまだ何だろう。


走りだ出した。
現在位置から少し行けば崖がある。
ナップサックを掴んで一番端まで行く。
少年の声が聞こえたが無視した。
もう何も聞こえない。
でも、きっと、それは私を止めようとする声だろう。


「ねぇ、少年。キミは優し過ぎたんだよ」


呟いた。
気づけば、もう崖の端。
一歩後ろに踏み出せば、きっと真っ逆さまに落ちていく。


「でも有難う。素直に嬉しいよ。だから、ね、さようなら。」


その一歩を踏み出した。
下は見ない。
高さなんて見なかったし、下手をすると生き残るかもしれない。
でもそれはそれでいい。


重力に逆らえる訳がなく、ただ、ただ、落ちていった。
真っ青な空。
そんな中で私を見下ろす泣きそうな彼の顔が酷く印象的だ。
見下ろされるのは私の趣味じゃないが、この状態では仕方がない。
私は静かに目を閉じた。


死ねるのならそれはそれでいい。
生き残ったならそれも一興。
選ぶ道はただ一つ


―私の賭けなのよ、これは




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