それさえも…

短い。


よく分からなかった。
今、目の前で何が起こったのか。
少年は立ち尽くす。
人が落ちていたばかりの崖を覗き込む勇気なんて自分にはない。


ドスッとかいう落下音がして。
女帝さんが落ちていく様子をじっと見て。
でも、彼女は少しも動かなくて。
それで、
それで、
終りだ。
自分は目を背けた


生きているのか死んでいるのか分からない。
もし死んでしまったのなら…誰の所為だ?
自殺だ。
これは完璧に自殺だ。
でも彼女は自殺はしたくないと言っていた。
そんな彼女の自殺する原因となったのは。


―俺だ。
―正確には俺の言葉だ


ただ、立ち尽くした。
手の中のコルトガバメントをぎゅっと握り締める。
とりあえず移動しよう。
生きているとしても自分では助けられない。
それに…身動き一つさえしない女帝さんは死んでいるようにしか見えなかった。
血は見えなかったけど、でもただ出る前に自分が視線をずらしただけなのかもしれない。


足をゆっくりと動かす。
どうすればいいか分からなかったけど。


―そんな時どこかで銃声がしたことに今更ながらに気付く




AM 2:00   名簿番号三番 華南 生死不明 残り九名