書記と魔法使い



「へぇ…大切な人の為に旅をしてるんだ。」

「凄いね、めんたいこさんとムーミンさん。」

「「なんでその呼び方!?」」


ささめとクライムは二人同時に華南に突っ込んだ。
正体を隠す為に、不本意ながらもこの名前を名乗っている。
といっても名前を名乗ったくらいで正体をばれる訳がないだろうが。
二人ともそのことには気付いていない。


「せめて、ささめとクライムにしようよ…」

「めんたいことムーミンの方が可愛いやん。」

「可愛くないから!?」


楽しい食事の時間はすぐに過ぎていく。
三十分もすれば運ばれてきた料理は全て食い尽くされていた。
昔からの友人かのようにささめとクライムもその場の雰囲気に馴染んでいた。
さて…とOVAが伝票を手に取る。


「で、会計はどうするの?」

「割り勘でいいんじゃない?」

「えっお金なんているの…?」


世間知らずは発言きたっっっ!!
ささめの頭を思いっきりクライムレスは叩く。
どこかの世間知らずのお嬢様なのだろうか?
そんな疑問がOVAの頭にはよぎる。


「えっと…今この状態でお金を持ってる人は挙手。」


・・・・・・・・。


「えっと…誰も持ってないの?」

「だって華南さん、私華南さんの弟子って設定やし。」

「私なんて魔神だから持ってる訳ないじゃん。」

「俺よく分からないけど盗賊っていう裏設定だから有り金ないんだけど。」

「…少年は?」

「敵役がそんな金を持ってると思う?」

「思わないね。物語のセオリーとか考えちゃうと。」


つまり…
皆の視線が一箇所に集まる。
その視線に華南はため息を吐いた。
現実世界では一番奢ってもらっている立場なのに…。
そのツケが今更ながらに来たというのか。


「分かった。よく分からないけど、礎の魔女は一杯稼いでいる設定なので私が払います。」

「わーいw華南様太っ腹w」

「ってか絶対にあくどい事してがっぽり稼いでるんだろうね。」

「してないってば…そんなこと言うと私払わないよ?」


すみませんでした!!!
慌てて皆が誤る中、クライムレスだけが店員を呼ぶ。
会計お願いしまーす、と店員に向かって余所行きの笑顔を浮かべた。
その瞬間、ガッという妙な音と共に入り口の扉がぶっ飛ぶ。
砂煙の中一人の男が顔を出す。