身内

発掘した


15:45


「…何してんの四人で」
「いや、色々とありまして。そういう少年はクラブ良いの?」
「ちょっと抜け出してきただけやからすぐ戻るけど。」
「ふぅーん。」


興味無さ気にえすこが小さく声をもらす。MCと食堂の間にあるベンチに彼らはいた。アドバンス側の二人は最早諦めきっているようで、全てを今この場に居ないさうの所為にしていた。逆にガーディアン側の二人は呑気にも自販機で買った紙コップのジュースを飲んでいた。腹いせにささめが眉毛に奢らせようと試みたが彼女が何も持っていないのを見るとどうやらそれは失敗したようだ。


「それで、バトルは良いわけ?」
「だってさ女帝さん消えちゃってんもん。どうしろって言うねんな」
「なら俺探そうか?」
「いや、探さなくても良いよ。このままやったらどうせ俺ら勝つし」


しかしそんな彼らの言葉を聞いていないのか、それとも聞いていて敢えて無視しているのか(真実は少年のみ知る)少年はポケットから一枚のカードを取り出し宙へと投げた。カードが明るく光だし、そしてその光は少年の眼鏡を包み込んでいた。眼鏡が光るその様子は俗に言う逆光眼鏡。しばらくすれば光は完全に眼鏡へと吸い込まれていた。少年の眼鏡が細いフレームから某七つの球を集めると願いが叶っちゃう漫画の戦闘力を測る道具スカウターのような形状の物へと変化している。


「…でも華南さん、さうと一緒に居んで?」
「マジ!?よくやったさう…!」
「しかもカード使用してるし」
「どこ!?ちょっと負けてMC立ち入り禁止とか嫌やねんけど!?」
今出川のゲーセン。」


スカウターもどきをたまに弄りながら少年はそんなことを言った。実際にカードを使用しているのはさうだけだという事が若干気になる。しかし今回のバトルを知らない華南がカードの使用をしないというのはある意味頷けるだろう。しかし売られた喧嘩は買う主義の彼女だ。最終的にはカードを使用してしまうはず。さうの使用しているカ―ドは「戦車」で攻撃型ではないので色んな意味で後が怖かった。


「えすこ、あれ出来る?」
「OK、任せておいてよ。」


どうやらゲーセンでさうがカードを使用したことによって焦ったらしい。えすこも何処からともなく取り出したカードを宙へと投げた。閃光と共に彼女の手の中にあったのは二対のツボ。幾何学模様というツボに珍しいデザイン、持ち手までしっかりと付いているあたりツボと形容するよりは水がめと形容した方が正しいのかもしれない。えすこは右手に持ったツボを傾ける。明らかにツボの容量を越えた水が溢れ出し、近くにあった排水溝へと流れ込んでいった。


「OVA!!うちらも何とかせな。さう一人じゃ頼りないって!」
「じゃあささめ、行ってこいww」
「えっ…」


何時の間にカードを使用していたのだろう。OVAの手の中には鞭。何時もの笑顔を浮かべたまま、器用に鞭でささめを掴む。ささめを中心に空間が歪んだ。グルグルと渦を巻きそして渦がささめを飲み込む。何時の間にかささめは居なくなっていた。それに満足したのかOVAはふぅっと息を吐いた。


「眉毛は行かんの?」
「だって俺が行っても絶対に足手まといになるだけやしwww」